負極

炭素材料

 

リチウムイオン電池の負極で最も一般的な負極材料が黒鉛やソフトカーボンである。黒鉛は結晶性が高く、容量、初回充放電効率、サイクル特性のバランスに優れている。ソフトカーボンは容量は黒鉛よりも低く、また、表面の官能基の存在による電解液の分解(初回充放電効率の低下を招く)を抑制するため、表面改質するのが普通である。

日立化成テクニカルレポートより http://www.hitachi-chem.co.jp/japanese/report/047/47_r6.pdf

ハードカーボンは、リチウムイオンがトラップされやすいポケットが多く、初回充放電効率は低いが、リチウムイオンの出入りできるサイトが多く、入出力特性に優れる。価格は黒鉛やソフトカーボンに比べると高くなりやすい。

金属


シリコンやスズの容量は黒鉛の5~10倍であり、負極として使用できれば、電池の高エネルギー密度化が可能である。しかしながら、充放電に伴う体積変化が大きく、実用化が難しい。実用化されているのは、SiOで表されるシリコン一酸化物である。この材料は熱処理するとSiO2マトリックスの中に、Siナノ粒子が分散された構造になるといわれており、Siの体積変化をSiO2メトリックスが緩和する。厳密には、SiO2は初回の充電過程において、リチウムシリケートになる。SiOはSiそのものよりはサイクル特性に優れるが、単体で使用するにはサイクル特性は不十分である。

二次電池技術開発ロードマップ2013、BatteryRM2013

Si負極のサイクル特性を改善するため、体積膨張を吸収できるようにあらかじめ空隙を含む炭素の殻の中にSiナノ粒子をいれる[1]、Siナノワイヤーを集電体に垂直には配向させ、各ナノワイヤー間に隙間を作る[2]などの手法がある。

[1] Y. Sun, N. Liu, and Y. Cui, "Promises and challenges of nanomaterials for lithium-based rechargeable batteries", Nature Energy (2016) DOI:10.1038/NENERGY.2016.71
[2] L.-F. Cui, R. Ruffo, C. K. Chan, H. Peng, Y. Cui "Crystalline-Amorphous Core-Shell Silicon Nanowires for High Capacity and High Current Battery Electrodes" Nano Lett. 9, 491-495 (2009)

シラ・ナノテクノロジーズ(Sila Nanotechnologies)は前者の思想に基づいている。
関連サイト:Forbes記事

スタンフォード大のCui教授の技術を生かしたスタートアップ会社「Amprius」は後者のコンセプトに基づいている。
関連サイト:Stanford Start-Up Amprius Aims to Mass Produce High-Energy Lithium Ion Batteries

 

酸化物負極


東芝製のSCiBは負極にチタン酸リチウムを用いているのが特徴である、このおかげで、(1) 高速充電できる、(2) サイクル特性に優れる、(3)安全性に優れるという特徴がある。

これは、チタン酸リチウムのLi挿入・脱離電位が炭素材料や金属負極よりも高く、電解液の分解が起きにくい電位で使用されるためである。そのため、粒子径を小さくすることが可能となる。また、放電時にはチタン酸リチウムは絶縁体であり、短絡しても放電がストップする。

チタン酸リチウムの欠点は以下である。
(1) 低エネルギー密度:理論容量は175 mAh/gであり、黒鉛の約半分であり、また、電池電圧も約1.5 V低くなる。
(2) 負極にもリチウムを使用するため、炭素材料に比べると価格が高くなる。

(1)の欠点を補うため、チタンニオブ酸化物(TiNb2O7)を開発した[3]。
[3]黒鉛の2倍容量の新酸化物負極を採用した次世代二次電池SCiBTMを開発
しかしながら、Nbは高価な材料であり、2020年の実用化を目指すとあるが、普及は難しいと予想する。

ニオブータングステン酸化物[4]やリチウムニオブ酸化物[5]もLTO代替になりうる材料として報告されているが、いずれもニオブを使用しているのがネックである。

[4]Niobium tungsten oxides for high-rate lithium-ion energy storage
Kent J. Griffith, Kamila M. Wiaderek, Giannantonio Cibin, Lauren E. Marbella & Clare P. Grey
Naturevolume 559, pages556–563 (2018)

[5]High-rate electrochemical energy storage through Li+ intercalation pseudocapacitance, Nature Materials volume 12, pages 518–522 (2013)

また、タングステン酸化物負極も良好な特性が報告されている[6]が、タングステンも同様に高価である。

[6] 東芝マテリアル、酸化タングステン負極で超高速充放電

2D マテリアル


Drexel UniversityのProf.Gogotsiが初めにnatureで報告(2014年)した材料であり、MXeneなどで表現されるTi3C2Tx MXeneや、異なる2D材料を積層させる技術が報告されており、大変興味深いが、合成方法が煩雑であり、量産スケールでも安価な材料にするのは難しい可能性が高い。キャパシタ的な特性を示すが、層状化合物であることを利用し、キャパシタとしては高い容量(210 F/g)を示す。

下記は、Ti3C2Tx MXeneや2D heterostructureの構造。

 

 

Conductive two-dimensional titanium carbide ‘clay’ with high volumetric capacitance
Michael Ghidiu, Maria R. Lukatskaya, Meng-Qiang Zhao, Yury Gogotsi & Michel W. Barsoum
Nature volume 516, pages 78–81 (04 December 2014)

 

 

2D metal carbides and nitrides (MXenes) for energy storage
Babak Anasori, Maria R. Lukatskaya & Yury Gogotsi
Nature Reviews Materials volume 2, Article number: 16098 (2017)