最新の研究:リチウムイオン電池

形状記憶合金を利用した熱調整器による電池の熱管理

形状記憶合金を利用した熱調整器による電池の熱管理の提案がNature Energyにてされた。

 

リチウムイオン電池は低温、例えば-30℃では十分な入出力が出なくなり、高温、例えば60℃では電池劣化が進んでしまう。自動車用電池では、冷却システムで冷却されており、高温での劣化を抑えている。

本論文では、形状記憶合金を利用し、外部電源の利用なく、熱伝導のON/OFF機構によって高温では効果的に熱伝導(ON)して高温になりすぎないようにし、低温では熱伝導を抑え(OFF)低温時の冷却を抑える機構を開発した。具体的な構造は以下のとおりである。

Tsouceの部分とTsinkの部分の距離が近くなるとON、離れるとOFFになるような機構である。

もう少し具体的な絵が下図である。SMAと書かれた部分が形状記憶合金であり、低温では左のようにスプリングによって電池は冷却部とは離れているが、高温になると形状記憶合金が縮んでスプリング抑え込まれ、電池が冷却部に近づくようになっている。外部電源を必要としないため、構造そのものはシンプルである。

 

 

液化ガスを電解液溶媒に用いたリチウムイオン電池

通常のリチウムイオン電池は-20℃が駆動限界温度であるが、本論文は、「液化ガスを電解液溶媒に用い、-60℃でも作動することを可能にした」研究であり、Scienceに投稿された[1]。

[1] Liquefied Gas Electrolytes for Electrochemical Energy Storage Devices. Science, Jun. 14, 2017 DOI: 10.1126/science.aal4263

 

具体的には、ジフルオロメタンとCO2を19:1で混ぜ、圧力をかけて液化し、0.2 M LiTFSAを溶解している。ここで、CO2は被膜形成材として添加している。

 

また、圧力がかかった状態で使用されるため、負極に金属リチウムを用いた場合、デンドライトが抑えられる傾向にある。

液化ガスを用いるという発想は大変ユニークだが、やはり量産するにはハードルが高いだろう。

酢酸エチルをベースにした電解液と有機活物質を組み合わせて用いることで-70℃で駆動可能にした論文[2]もあり、また、低温での駆動が求められるのは、パッと思いつく限りでは、宇宙用であり、実際に求められている特性かは疑問である。

[2] "Organic Batteries Operated at −70°C" Volume 2, Issue 5, 16 May 2018, Pages 902-913

高温から低温までのリチウムイオン電池の温度特性についてまとめたレビューは下記になるので、興味のある方は読んでみるとよい。


リン酸トリメチルを使いこなした高性能難燃性電解液

LiFSA(リチウムービス(フルオロスルホニルアミド、論文でFSIで記載塩と難燃性溶媒リン酸トリメチルの比率を1:2に制御し、さらにFECとLiBOBを添加剤として加えることで、難燃性で高安全なリチウムイオン電池を可能とした。

 

もともと、リン酸トリメチルは難燃剤としてリチウムイオ電池の電解液(添加剤)として知られていたが、負極側で分解し、電池性能の低下を招くことが課題であった。本論文では、リチウム塩と難燃剤の比率を適正化することで、難燃剤にリチウムイオンを配位させ、難燃剤の黒鉛負極上での分解を抑制した。

 

容量の低下はみられるが、本技術を適用しない(塩の濃度を適正化していない)場合よりも大幅に特性が改善されており、また、レート特性の低下もなく、2Cで十分使える電池となっている。

 

 

 

高速充放電と高容量、長寿命を実現した、画期的なリチウムイオン電池

SEI被膜の形成を抑制するため、中空グラフェン粒子の中にシリサイドをナノワイヤで形成することで電解液と直接触れないようにし、また、高速充放電と高容量、長寿命を実現した、画期的なリチウムイオン電池。

 

20Cでの放電も可能であり、また、高容量な金属負極を用いているにもかかわらず、2000サイクル間安定である。あとは、いかに本材料を安く量産できるかにかかっている。というのは、あまりに合成プロセス数が多く、合成方法自体も煩雑であるからである。

 

Controlling electric potential to inhibit solid-electrolyte interphase formation on nanowire anodes for ultrafast lithium-ion batteries
Won Jun Chang, Su Han Kim, Jiseon Hwang, Jinho Chang, Dong won Yang, Sun Sang Kwon, Jin Tae Kim, Won Woo Lee, Jae Hyung Lee, Hyunjung Park, Taeseup Song, In-Hwan Lee, Dongmok Whang & Won Il Park
Nature Communicationsvolume 9, Article number: 3461 (2018)