新型電池

デュアルイオン電池 (Dual-ion battery)

(1) アルミニウム負極を用いたデュアルイオン電池

スタンフォード大が負極にアルミニウム金属、電解液にアルミクロロナート系イオン液体を用い、正極にグラファイトを音痴いている。負極では、Alイオン/Al金属、正極ではAlCl4-アニオンが挿入される。

 

Nature, volume 520, pages 324–328 (16 April 2015) "An ultrafast rechargeable aluminium-ion battery"

特徴
(1) 高入出力
(2) 金属負極を用いているにも関わらず、7500サイクル間、安定。

欠点はエネルギー密度が低いこと、電解液が水に対して不安定であることである。
容量については、正極の容量を改善した論文が続報である。

Advanced rechargeable aluminium ion battery with a high-quality natural graphite cathodeNature Communications volume 8, Article number: 14283 (2017)

6Cで60 mAh/gの容量を6000サイクル間安定に作動している。エネルギー密度が低いため、携帯電話等には使用できないが、バックアップ電池としては有望と考えられる。

(2) デュアルカーボンバッテリー

正極、負極ともに炭素材料を用い、負極では通常のリチウムイオンの挿入・脱離、正極ではリチウム塩のアニオン(PF6-など)を挿入・脱離する。

九大で開発された電池であり、スピンアウト企業としてPower Japan Plusが設立されたが、PJP Eye株式会社に譲渡された。

また、リコーでも研究・開発されている。

 

リコーHPより

エネルギー密度は低いが、バックアップ電源、再生可能エネルギーの貯蔵用、電力安定化用電池として有望である。

プルシアンブルーを用いたナトリウムイオン電池

 

スタンフォード大での研究を生かしたスピンアウト企業Natron Energyでは、顔料であるプルシアンブルーを用いたナトリウムイオン電池を開発している。

大元の技術はこちらの論文である。

Copper hexacyanoferrate battery electrodes with long cycle life and high power
Colin D. Wessells, Robert A. Huggins & Yi Cui
Nature Communications volume 2, Article number: 550 (2011)

プルシアンブルーは結晶格子中に隙間があり、そこにイオンが吸着・脱離するようなキャパシターのような蓄電機構に基づいていて、ハイパワーが可能だが、キャパシターよりはエネルギー密度が高い。特性としては、デュアルイオン電池に似ている。

 

フロー電池

 

通常の電池の活物質は、充電または放電状態のいずれかで固体状態である(鉛蓄電池の場合、鉛金属、リチウムイオン電池の場合は黒鉛や金属酸化物)が、活物質がイオンの状態で溶けている状態で使用するのがフロー電池である。

最も一般的なフロー電池がバナジウムイオンを用いた電池であり、住友電工が実用化している。

 

エネルギー密度は低いが、大規模な蓄電池に向いているといわれている。しかしながら、電池の大量生産に向いておらず、電解液タンク容量(電解液量)を大きく(多く)すれば、簡単に電池容量を大きくできるのがウリであるが、実際には、実用サイズのセルの構造は複雑である。

これは、圧力損失をさげるため、また、セルを直列にしたときの漏れ電流を小さくするために複雑なセル(フローチャンネル)構造になる。

また、バナジウムイオンなどの金属イオンだけでなく、有機物も優れた特性を示す。特に盛んに研究を行っているのがハーバード大である。代表的な論文は以下。
・Huskinson B, Marshak MP, Er S, Gerhardt MR, Galvin CJ, Chen X, Aspuru-Guzik A, Gordon RG, Aziz MJ. A metal-free organic–inorganic aqueous flow battery. Nature. 2014;505 :195-198
・Lin K, Chen Q, Gerhardt MR, Tong L, Kim SB, Eisenach L, Valle AW, Hardee D, Gordon RG, Aziz MJ, et al. Alkaline Quinone Flow Battery. Science. 2015;349 (6255) :1529-1532
・Lin K, Gomez-Bombarelli R, Beh ES, Tong L, Chen Q, Valle AW, Aspuru-Guzik A, Gordon RG, Aziz MJ. Aredox flow battery with an alloxazine-based organic electrolyte. Nature Energy. 2016;1 (16102)

体内の

我々の体はDNA、脳、代謝、酵素など複雑な物質、機構でできているが、進化を通して、賢いシステムに出来上がった、いわば完成形である。それに比べると、人工的なもの、たとえば、コンピューターであっても人間のような複雑な思考はまだ遠く及ばない。むしろ、脳のニューロン構造をを模倣してディープラーニングが開発された。このように、生体系のものを真似して物事を作るのは賢い方法である。

(1) 代謝に関与する材料を電池活物質に。
我々は食べ物を食べ、代謝を通してエネルギーを作り出している。この代謝には多くの酸化還元物質が関与しており、それを電池の活物質に利用した研究もある。

下の研究はフラビン、ルミクロームなどをリチウムイオン電池に応用した研究である。

 

Nature Communications volume 5, Article number: 5335 (2014)

こちらはフロー電池に応用した研究である。

Nature Communications volume 7, Article number: 13230 (2016)

(2) 電子とイオンの役割を逆に!
多くの人が知っているように筋肉は電子やイオンでで動いているが、その機構は電池の逆である。電池では、電極間はイオンが伝導し、それ以外は電子が伝導する。体内では、電極間では電子が伝導し、それ以外はイオンが伝導する。

そのような発想に基づいて電池を作成したのが下記論文(上図も同論文から引用)。かなり、作るのが難しいが、200年後とかにはこっちの発想に基づいた電池が主流になるかも。とはいえ、体内のイオン伝導の方法はかなり複雑なたんぱく質や膜を利用しており、これを模倣した電池の実用には程遠い。

Nature Communications volume 8, Article number: 15609 (2017)