各国の政策

日本の燃費規制

日本の乗用車の燃費規制は、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」に基づ き定められている。乗用車に関しては、2015 年度燃費基準で 17.0 km/L(138 g-CO2/km)、2020 年 度燃費基準で 20.3 km/L(115 g-CO2/km)となっている。

なお、現在の燃費基準は車両重量区分ごとの基準達成が求められているが、2020 年度基準から は欧米と同様の企業別平均燃費基準(CAFE: Corporate Average Fuel Economy)方式が採用され ることになっている。ただし現状では EV/PHEV は、本基準の枠組みから外れているため、2020 年度 基準が普及に与える影響は少ないと考えられる。

日本の EV/PHEV 普及目標

日本において EV/PHEV の普及は、燃費規制の点から推進されているわけではなく、自動車産業 政策(自動車産業の競争力の維持・強化)の一環として実施されている。

例えば、経済産業省が 2010 年 4 月に発表した「次世代自動車戦略 2010」では、次世代自動車の 普及目標として、乗用車の新車販売台数に対する EV/PHEV の割合を、2020 年に 15~20%、2030 年に 20~30%としている3(表 1-2)。

また 2013 年 6 月に閣議決定され、その後 2014 年 6 月に改訂された「日本再興戦略」も「次世代 自動車戦略 2010」の目標を踏襲しており、次世代自動車については 2030 年までに新車販売に占め る割合を 50~70%とすることを目指すとしている。

なお EV/PHEV の 2020 年目標は、経済産業省が 2016 年 3 月に発表した「EV・PHV ロードマッ プ検討会報告書」では、「最大 100 万台」(新車販売に占める割合約 6%)に修正されている。

 

米国の燃費規制

米国の乗用車の燃費規制は、環境保護庁(Environmental Protection Agency: EPA)、運輸省 道路交通安全局(National Highway Traffic Safety Administration:NHTSA)によって策定されている。 これは企業平均燃費(Corporate Average Fuel Economy: CAFE)基準4と呼ばれ、2012 年に定めら れた基準では、乗用車と小型トラックの 2025MY(モデルイヤー)における燃費を 54.5 mpg(23.2 km/L、100.9 g-CO2/km)と定めている(表 1-3)。

またガソリンを消費しない、あるいはガソリン消費量が少ないとされる EV、PHEV、FCV に関しては、 2021 年までは導入台数に一定の係数を掛けてカウントしてよいことになっている(表 1-4)。2019 年 までは、EV は 2 台に、PHEV は 1.6 台にカウントしてよく、このことは EV や PHEV の普及拡大に寄 与すると考えられる。

米国の排出量規制

カリフォルニア州等 10 州が採用している ZEV 規制は、EV や PHEV の普及拡大に直接的に影響する排出量規制である。

カリフォルニア州では、2012 年に改定された ZEV 規制にて 2017~2025MY の規制の枠組みが定
めている。これによると、大規模・中規模メーカ(表 1-5)は、2018年以降に順次ZEV(EV、FCVが該 当)、TZEV(Transient ZEV、PHEV が該当)6を導入することになっている(表 1-6)。
特に大規模製造販売メーカには最低 ZEV フロアが定められている。例えば、2018 年には 4.5%と なる ZEV クレジットのうち、一定割合を ZEV だけで達成しなければならない。一方、中規模製造販売 メーカは全数を PHEV だけで達成することも可能である。

 

ZEV 規制における、EV の ZEV クレジット計算方法を図 1-1 に示す。ゼロ・エミッション走行距離 に応じて最大で 4 台分のクレジットが得られるが、現状で日産 LEAF は 2 台分のクレジットが得られ る計算になる。今後、250 マイル(400 km)程度の EV 走行距離を有する EV が販売されれば、それ は 3 台分のクレジットが得られることになる(図 1-1)。


なお年間 10 万台を販売している大規模製造販売メーカの場合、2018MY の ZEV クレジット(4.5%) に相当するのは 4,500 台となる。本来はこのうち 2,000 台を ZEV クレジットで達成しなければらない が、クレジット 3 台分にカウントされる EV を有していれば、これを 667 台導入すればよいことになり、 残りの 3125 台は PHEV 等の TZEV で充当すればよいことになる(図 1-2)。このことは、EV の導入 インセンティブになり、より走行距離の長い EV を開発するモチベーションとなる。

 

米国の EV/PHEV 普及支援策

オバマ大統領は一期目の大統領就任時の 2009 年に、「2015 年までに米国に先進自動車を 100 万台普及させる」という方針を打ち出した7。併せて連邦政府は、EV/PHEV 普及支援策として直接的 な補助金(リベート)を設定している。
更に現状で、約 10 州が EV/PHEV 普及支援策を有している。 米国の主な EV/PHEV 普及支援策を表 1-7 に示す。


欧州の燃費規制

欧州全体としては、2014 年に施行された「EURO6」の排気ガス規制8に加え、CO2 排出量削減を目 的とした燃費規制が導入されている。
この燃費規制は CAFE 基準方式で、乗用車に関しては、2015 年で 130 g-CO2/km(17.8 km/L)、 2021年で95g-CO2/km(24.4km/L)9となっており、世界でも最も厳しい規制となっている(表 1-8)。 ただし、規制年までに徐々にこれに適合させることを狙い、「フェイズイン」が設定されている(例. 2021 年の 95 g-CO2/km 規制に対しては、2020 年段階では 95%の車両がこれに適合すればよい)。
また、CO2 排出量が大幅に少ない車両(50 g-CO2/km 未満)10については、スーパークレジットとし て、導入台数に一定の係数を掛けて計算してよいことになっており、EV/PHEV の早期導入に寄与 すると考えられる。

 

欧州の排出ガス規制

欧州では、欧州環境局(European Environment Agency: EEA)の環境規制レベルを超えている都 市や地域が多く、各国や各都市においてはその対応が必須となっている(図 1-3)。
欧州連合では、環境基準を超えている都市・地域にはペナルティを課すことを検討しており、都市 によっては、既に都市部への通行料金を課すことで車両数を減らしたり、都市部への一般車でのア クセスを規制したりしている(図 1-4)。
このような通行料金制やアクセス制限において、低 CO2 排出量の EV や PHEV は規制の対象から はずれているため、EV/PHEV を導入するインセンティブとなっている。

 

欧州の EV/PHEV 普及目標

欧州連合、欧州投資銀行(European Investment Bank: EIB)、産業界等は、2008 年に官民パート ナーシップ「欧州グリーンカー・イニシアティブ」(European Green Cars Initiative: EGCI)を立ち上げ ている。
EGCI が 2011 年 10 月に発表したロードマップでは、2020 年に 500 万台の普及を予測している (図 1-5:左)。このロードマップは 2013 年 10 月に EGCI の後継組織である「欧州グリーンカー・イニ シアティブ」(European Green Vehicles Initiative: EGVI)にて改定され、2025 年までの普及目標が 追加されている(図 1-5:右)。

また欧州連合は、共通のエネルギー戦略である「欧州戦略的エネルギー技術計画(Strategic Energy Technology Plan :SET-Plan)」の一環として、2015 年に 10 項目11のアクションを策定した。こ のうちのアクション 7 が「電動モビリティ推進に資する世界の蓄電池分野での競争力強化(Become competitive in the global battery sector to drive e‐mobility forward)」であり、戦略として 2020 年まで に EV 生産台数 50 万台/年を掲げている。

欧州の EV/PHEV 普及支援策

欧州の EV/PHEV に対する普及支援策は、各国や地域ごとで定められている。欧州主要国の EV/PHEV 普及支援策を表 1-9 に示す。

中国の燃費規制

中国は 2013 年 3 月に「乗用車企業平均燃料消費量査定弁法(CAFC:Corporate Average Fuel Consumption)」を発表した(表 1-10)。CAFC は CAFE 基準と同様の燃費規制であり、この規制に おいては、NEV(New Energy Vehicle)は 2016~2017 年には 5 台に、2018~2019 年には 3 台に、 2020 年には 2 台としてカウントしてよいことになっているため、EV/PHEV の早期導入に寄与すると考 えられる。

中国の排出量規制

中国では、米国の ZEV 規制に準じた「NEV 規制」を 2018 年から導入する準備を進めている。これ
は自動車メーカに NEV の生産や輸入を義務付けるもので、NEV 比率を義務化し、クレジット管理す る点は ZEV 規制と同様である。現状の提案では、2020~2021 年における NEV 比率は 3~5%とさ れ、その比率は年々引き上げられる見通しである。この政策は、EV や PHEV 普及を大きく後押しす ることになると考えられる。

中国の EV/PHEV 普及目標

中国国務院は 2012 年 6 月、自動車産業の発展を目指した「省エネルギー及び新エネルギー自 動車産業発展計画(2012~2020 年)」を発表した。ここでは、一般車と省エネルギー車(HEV が相当) の燃費目標に加え、EV と PHEV の累計生産台数目標も盛り込まれており、2015 年で累計 50 万台、 2020 年で累計 500 万台を目指すとしている(表 1-11)。

中国の EV/PHEV 普及支援策

EV/PHEV 普及支援のため、中国政府は EV/PHEV に対する購入補助金を設定している(表 1-12)。
なお、地方政府は中央政府とは別に補助金を設定できるが、その上限は中央政府補助金額の 50%を超えないこととなっている。

なお、中国で EV/PHEV 補助金の受給対象となるのは「新エネルギー車製品目録」に掲載されて いる車種のみである。また 2016 年 5 月からは、この目録に掲載される条件としては、該当車種に搭 載する蓄電池のメーカが「自動車駆動用電池規範条件適合企業目録」に掲載されていることが必須 となっている。現状で、中国メーカのみが掲載されており、中国国内で LIB 工場を有しているサムス ン SDI や LG 化学は、まだ目録に掲載されていない13。