QuantumScape

2018年6月にドイツVolkswagen(VW、フォルクスワーゲン)が約110億円をQuantumScapeに出資した。

 

VWは、その技術を用いて2025年までに全固体電池を実用化する予定と発表した。

All Electron Battery (AEB)

QuantumScapeの主要開発技術の1つである「All Electron Battery (AEB、全電子電池)」は全固体版電気二重層キャパシターの一種といえる。ただし、(1)キャリアはすべて電子で誘電体をトンネル効果で透過する、(2)高いエネルギー密度は、電子と正孔のベアである励起子がボーズアインシュタイン凝縮(BEC)を起こすことで実現する、といった同社の説明では、安価な電池の実現はもちろん、実用的な製品になりうるかは疑問が残る。例えば、ボーズアインシュタイン凝縮はごく低温でしか起こらないためである。

QuantumScape自身、その特性値はおろかAEBを試作したかどうかも明らかにしていない。ただ、VWはQuantumScapeが試作したセルをドイツに持ち帰り、EVのテスト走行をした、とも発表している。

最近のQuantumScapeが取得した最近の特許は、LLZ(ガーネット系Li7La3Zr2O12)と呼ばれる酸化物系材料について出願している。

URL: https://www.quantumscape.com

おまけ:量子電池

よりたくさんのエネルギーを高速に充放電できるようにしたい。それもほぼ永久に――。新たな二次電池を開発する上で、エネルギー密度、充放電速度、寿命、これら3つの特性を高い水準で達成することは容易ではない。

 2014年2月に開催された「第5回国際二次電池展」(2014年2月26~28日、東京ビッグサイト)では、これら3つの特性を満たす可能性のある二次電池が、半導体テスター用プローブカード大手の日本マイクロニクスブースで披露された。「battenice(バテナイス)」である。

 リチウムイオン電池のような化学電池でも、電気二重層キャパシタのような物理電池でもない、「量子電池」を自称するバテナイスは、リチウムイオン電池と同等のエネルギー密度と、電気二重層キャパシタと同等の充放電速度と寿命を持つとしていた。そして、2014年内に評価キットを発売するともしていた。

しかし2015年6月24日、日本マイクロニクスから「二次電池batteniceの研究開発体制の変更に関するお知らせ」というリリースが発表された。

 発表文は、確かにバテナイスの研究開発体制を変更する内容になっていたものの、その理由こそが最も大きなニュースと言っていいだろう。バテナイスが達成可能としていた目標性能は現時点で達成しておらず、その他の技術的課題も見つかったというのだ。


 バテナイスは、グエラテクノロジーというベンチャー企業が開発した「グエラバッテリー」という技術がベースになっている。グエラテクノロジーはガラス基板上に小面積でしか試作できなかったものを、日本マイクロニクスの技術を用いて金属薄膜上により大型のものを製造できるようにしたものをバテナイスと呼んでいる。研究開発体制も、グエラテクノロジーが基礎性能向上を、日本マイクロニクスが量産化技術を担当するという体制になっていた。

 今回の発表では、バテナイスの研究開発体制のうち、基礎性能向上の担当からグエラテクノロジーを外し、複数の大学との共同研究に切り替えることになった。このため、日本マイクロニクスとグエラテクノロジーのバテナイスに関する契約内容は、共同研究開発契約から、グエラテクノロジーが持つ特許やノウハウなどのライセンス契約に移行する。

 ではなぜ複数の大学との共同研究に切り替えなければならないのか。それは、「グエラテクノロジーはバテナイスの目標仕様達成に向けた基礎性能向上のための研究を進めてきたが、現時点においては、目標仕様が達成されるかが定かではなく、当社の今後の開発計画に支障を与える可能性が出てきた」(日本マイクロニクス)からだ。

 日本マイクロニクスの発表文にある「目標性能に対する達成状況」では、エネルギー密度と出力密度が、目標性能の10分の1以下にとどまっている。ただし書きで「充電層単独では」という性能数値が併記されているものの、基材層を含めた性能でなければ二次電池として評価することはできない。

 サイクル寿命も、ガラス基材の場合で目標の10万回を達成したとしている。しかし、当初予定の金属薄膜基材ではない上に、10万回の充放電サイクルの後、エネルギー密度が40%まで低下したという。一般的なリチウムイオン電池でが、容量が当初の80%まで低下するまでを“寿命”としていることを考えると、10万回という数字から差し引きする必要があるのは確かだ。

さらに大きな問題も見つかった。「当社においても、バテナイスの特性評価を進めた結果、目標性能以外の性能の点でバテナイスに関し自己放電が大きいなどの技術的な課題が存在し、その解決が容易でない可能性があると考えるに至った」(日本マイクロニクス)というのだ。

 同社が挙げる「その他の技術的課題」は3つ。1つ目は「自己放電率」だ。ガラス基材のバテナイスで、6時間放置すると容量の50%程度しか電力が残らないのだという。2つ目の「充放電効率」では、充電エネルギーに対する放電エネルギー量の割合が50~85%になることが分かった。つまり、最悪の場合で充電した電力の50%しか放電できないわけだ。

 3つ目の技術的課題は「積層技術」。バテナイスは、シート基材となる金属薄膜の上に負極となる電極膜を形成し、その上に充電層となる酸化物半導体の薄膜、負極となる電極膜を順番に積層した構造になっている。そのシートへの積層によって、サイクル寿命の低下が観察されている。

日本マイクロニクスは2015年5月に、ロールツーロールの設備を導入し、ロールシートにバテナイスを形成する環境を構築した。これまでシートで得た性能をロールシートで実現するためのプロセスの最適化を行っている。一度により多くのバテナイスを試作できるようになったので、3つ目の技術的課題である積層技術の開発を進める考えだ。

しかし、目標性能が未達で、短時間での自己放電や放電エネルギー量の割合の低さなど、二次電池として利用する上では解決すべき問題が山積している。そのために「複数の大学との共同研究」を始めるわけだが、パートナーとなる大学や研究室の名前は明らかになっていない。

 日本マイクロニクスは「当社は今後、大学などとも連携しつつバテナイスの目標性能の達成および自己放電などの課題の解決のための研究開発を継続するとともに、バテナイスの特長を生かした用途での製品化を目指す。もっとも、製品化に際しては、コストなどの観点での検討も必要であり、当面は、高付加価値で利益の得られる応用分野での製品化を検討していく予定である。なお、想定される市場が限られる場合、必要に応じて戦略を見直すこともある」としている。