全固体電池

次世代電池として全固体電池が注目されている。全固体電池のメリットは以下であるが、あくまでポテンシャルを秘めているというだけで、実際にこれらのメリットを出すのはかなりハードルが高い。

(1) 不燃性であるため、電池(セル・およびパックとして)の安全機構を簡略化でき、全体としてエネルギー密度が向上する。

(2) 有機電解液よりも耐酸化性が高い電解質を用いることで、5V正極(LiNi0.5Mn1.5O4など)などを使用できる。

(3) 高温で劣化しない電池ができれば、EVで使用される際の冷却システムを簡略化できる。

(4) Liイオンの輸率(全イオンに占めるLi+の動く割合)が1であるため、高入出力が可能。

(5) 金属Liを固い電解質で覆うことで、デンドライト析出を抑制し、金属リチウムの実用化を助ける。その結果、リチウム硫黄電池が実用化できる。

(6) 一つ一つのセルをパックする必要がないため、バイポーラー電極が可能となる。


硫化物系全固体電池

硫化物電解質は反応性が高く、正極とも反応してしまうことが課題であったが、NIMSによって正極をニオブ酸リチウム(LiNbO3)でコートすることで、電池として安定に作動することができるようになった。

URL:http://www.jst.go.jp/pr/announce/20140703/

もともと、大阪府立大で長らく研究されてきた。2016年に25mS/cmという液体電解液の約2.5倍の高いイオン伝導率を示す電解質Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3が報告された。リチウムイオンの輸率の違いを考慮すると、リチウムイオン伝導率は液体電解液の約7倍である。

 

固体電池は電極にも電解質を入れる必要があり、上記のNature Energyの論文では、最大60%の電解質(残りの40%が活物質)が添加されており、エネルギー密度はかなり低下する。これは、粒子状で電解質を添加しているためであり、湿式で添加すれば、いくらか改善されると考えられる。

1000Cでの放電レートも示されているが、充電レートも同様なハイパワーが可能かは不明である。

硫化物系全固体電池の課題

(1) 水と反応しやすく有害ガス(硫化水素)を発生するため、製造時、使用時の管理が難しい。
(2) 電池を数千トン(面積にもよるが)レベルの圧力をかけた状態で充放電する必要がある。

特に電池製造プロセスに課題があるとトヨタが発言しており、従来のリチウムイオン電池並みの製造コストで製造できるようになるかは不明である。トヨタでは200~300人規模で量産化のための研究をしており、いずれ実用化されるのではないか。

 

酸化物全固体電池

大気中でも安定であるが、一般的にイオン伝導度が低く、薄膜系では優れた特性が確認されている。検討しているメーカーは下記の通り。

国内
(1) 村田製作所:積層セラミックコンデンサー(MLCC)技術を利用
(2) FDK:ピロリン酸コバルトリチウム(Li2CoP2O7)(5V系正極が利用可能)
(3) 太陽誘電: NASICON型、積層セラミックコンデンサー(MLCC)技術を利用
(4) オハラ:LICGC系で300℃の温度でも緻密化できるのが特徴
(5) 日本特殊陶業: LLZ系
(6) TDK:積層セラミックコンデンサー(MLCC)技術を利用、「CeraCharge」を開発
(7)アルバック:LIPON or Li4SiO4、半導体製造技術を利用

LLZ:Li7La3Zr2O7、NASICON型:LAGP(Li1.5AL0.5Ge1.5(PO4)3、LATP(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3、LICGC(Li2O-Al2O3-SiO2-TiO2-GeO2、LLTO:La0.51Li0.34TiO2.94、LIPON:Li2.9PO3.3N0.46

海外
(1) Ilika:トヨタとも提携
(2) Sakti3:Dysonに買収されるも、創業者はDyson退職、特許も売却中。Dysonでは別の技術を使用していると考えられる。
ソース:Battery exec leaves Dyson two years after $90 million buyout
(3) QuantumScape: フォルクスワーゲングループが投資
ソース:Volkswagen Invests $100 Million In Solid-State Battery Start-Up QuantumScape
(4) Applied Materials:半導体製造技術を利用
(5) STMicroelectronics:半導体製造技術を利用

「随時追加予定」

ポリマー系全固体電池

(1) BatScap (Bolloré Group)

BatScap社(フランス)はPEO系のドライポリマーを電解質として用い、LixV3O8正極、金属Li負極と組み合わせて、シェアリングカー用に実用化している。電池パックは100 Wh/kgのエネルギー密度、電池は加圧して使用されている。温度は50℃程度に保持して作動。

(2) SEEO

PEO系のドライポリマーを使用しており、ロールtoロールでの電池製造も可能。LiFePO4正極、金属Li負極と組み合わせている。Boschに買収されたが、Boschがセル製造をやらないことを決め、売却中。

(3) Ionic Materials

上記(1)、(2)は50℃以上で作動させるのに対し、Ionic Materials社の電解質は室温でも1 mS/cmと高いイオン伝導率を示す。ヒュンダイ自動車、ルノー・日産等も投資している。

以下の米国テレビ番組に出ており(画像の電池は別の電池です)、ゴムのような電解質である。

 

特許を見ると、ポリフェニレンスルフィド (PPS) をベースにした、まったく新しい発想であることがわかる。